close-up KOBE -Long interview-

ロングインタビュー

橋本大輝選手インタビュー「コベルコスティーラーズはまだまだ子供が多い。自律した大人の選手が増えれば、もっと良いチームになる」

 取材日:2017年9月14日

橋本大輝選手インタビュー「コベルコスティーラーズはまだまだ子供が多い。自律した大人の選手が増えれば、もっと良いチームになる」

2012年から5シーズン、主将としてチームを牽引した橋本大輝選手。5年間という在任期間は、90年近いコベルコスティーラーズの歴史の中でも最長となる。長きにわたり主将を務めて感じたことや前川鐘平選手に託した思い、そして、橋本選手のラグビー人生を振り返ると共にモットーや今後の目標などを聞いた。

橋本大輝

Daiki Hashimoto

PROFILE
  • 1987年2月7日生まれ(30歳)、福岡県北九州市出身
  • 帆柱ヤングラガーズ→九州国際大付高→京都産業大→神戸製鋼コベルコスティーラーズ(2009年入部)
  • ポジション/FL
  • 身長・体重/184cm・100kg
  • 2016-2017シーズンまでの公式戦出場回数(プレシーズンリーグ2015含む)/97
  • 代表キャップ/1

人として成長させてもらった5年間

改めて5年間キャプテン、お疲れ様でした。

「コベルコスティーラーズの歴史の中で、5年間もキャプテンをしたのは、僕だけだそうです。今、振り返ったら、あっという間の5年間だったように思いますね」

橋本選手のキャプテンシーは、プレーで仲間を引っ張ることでした。それ以外でキャプテンとして意識していたことがあれば教えてください

「24時間見られていると思っていました。チームメイトだけでなく、会社関係者の方、ファンの方から、コベルコスティーラーズのキャプテンとして常に見られていると意識し、行動、言動、プレー、すべてにおいて完璧を目指していました。それは今も変わりません。今はコベルコスティーラーズの1選手としてちゃんとしなければいけないと思い、行動、言動に気をつけて、プレーも100パーセントやり切るようにしています」

キャプテンになるまでは、そうでなかったと。

「ラグビーに関しては手を抜いていなかったですが、キャプテンに就任するまで、私生活はあまり褒められたものではなかったと思います。キャプテンに就任してからは、当たり前の話しですが、信号無視をしたことがないですし、酔っ払ってハメを外すこともない。そこは自分自身、随分変わったと思います」

橋本選手自身は変わったとのことですが、チームは5年間で変化はありましたか?

「練習に取り組む姿勢はすごく良くなったと思いますね。僕がキャプテンをしてから1年目、2年目は、全体練習の後、残って自主トレをするような選手はいませんでした。だけど今は自主練習をすることが当たり前になっています。あと、練習に関しても、以前は100パーセントやり切る選手が少なかったですが、そこも良くなってきています。あとは、精神面。日本一を目指しているチームの選手であるにもかかわらず、自分を律することができない選手が多いなって。そこが良くなれば、もっと魅力的なコベルコスティーラーズになっていくと思うのですが、まだまだ子供のチームで、大人になり切ることができていない選手が多い。その部分を僕がキャプテンをしている間に良くしていきたかったのですが、変えることができませんでした」

そこは、今シーズン、キャプテンに就任した前川選手に託されたのでしょうか?

「そうです。前川に中心になってもらって、春からチーム理念のミーティングをしてもらっています。でもまだ子供の選手が多いので、自律している選手がもっと増えればと思いますね」

この5年間で得たものとは?

「人として成長させてもらいました。平尾(誠二)さんともいろいろと話をさせていただき、いい影響を与えてもらいましたし。でも僕だけ成長させてもらって、チームの成長が止まっているんじゃないかと感じてきて、それで、チームのことを考えたら、僕がこれ以上キャプテンを続けるのはあまり良くないんじゃないかと思い、キャプテンを交代させていただいたというのはあります。前川はリーダーシップがありますし、キャプテンとして、チームをいい方向へ導いてくれると思います」

これまでのプレーの出来は40点くらい。これから上げていく!

では、今シーズンのこれまでの戦いについて伺いたいのですが、4試合を振り返って、うまくいっている部分と課題を教えてください

「春から取り組んでいるディフェンスについては手応えを感じていますが、まだ評価できないですね。ヤマハ、パナソニック、サントリーといった上位チームと対戦した時にそれが通用するのか。課題はすべてです。まずアタックにしろ、ディフェンスにしろ、80分間、システムをやり切ることができていません。システムを崩されてトライをされたこともありますし、アタックでもシステムエラーが出てトライが取り切れなかったこともありました。80分間、システムをやり抜くことができるようにしないといけません」

ご自身のパフォーマンスはどうですか?

「昨シーズンの夏合宿で肩を怪我し、それをずっと引きずっていて、春は別メニューだったんです。夏合宿の練習試合や開幕直前に行われたトヨタ自動車戦には出場しましたが、全然コンディションが上がらなくて。開幕メンバーに選んでいただきましたが、動けていないなと感じています。パフォーマンスに点数をつけるとしたら、40点くらい。でも徐々に良くなってきているので、これから100パーセントに上げていきます!」

今シーズンからオーストラリア代表キャップ116を持つアダム・アシュリークーパー選手がチームの一員になりました。橋本選手から見たアシュリークーパー選手とは?

「1つ1つのプレーのレベルが高いです。痛いプレーもできるし、なんでもできる。それに、ラグビーをよく知っています。練習中に修正点を指示してくれたり、プレーのアドバイスをしてくれたりするんですが、的確で分かりやすい。重(一生)にも教えている姿をよく見ます。チームに良い影響を与えてくれる選手ですね」

厳しい戦いが続きますが、鍵になるのはどの部分だと思いますか?

「FW戦で勝負が決まると思っています。FW戦で、おじさんプレーヤーとして(笑)、FWを引っ張っていきます!」

トップリーグではただ一人!九州国際大付高出身プレーヤー

9年目のベテランとして、これまで同様にチームを勝利へと導いてくださいね。ところで、橋本選手のこれまでのラグビー人生について伺いたいのですが、まずはラグビーをはじめた年齢ときっかけを教えてください。

「小1の終わりくらいに、友達に誘われてラグビースクールに入ったのがきっかけです。最初の頃は嫌々練習に行っていましたが、自分から『やる』と言い出したことなので、辞めることができなくて、それでズルズルとここまで続けることになりました(笑)」

ラグビーを好きになったきっかけはあるんですか?

「ラグビーを好きとか嫌いとか考えたことがなかったですね。ただ見るのは好きだったので、Jスポーツに加入してもらって、海外ラグビーはよくチェックしていました。一番好きだったのは、元オールブラックスのSO、(アンドリュー)マーテンズです。僕自身は子供の頃からずっとFWだったので、BKはかっこいいなと思って見ていました」

高校は九州国際大付高に進んだんですよね。花園には出場されたのでしょうか?

「本当は小倉高校に行きたかったんですが、受験で落ちてしまって。それで滑り止めだった九州国際大付高に行きました。花園ですか?福岡には、東福岡という絶対君主がいますので、僕らはベスト8止まり。でも高校の練習は厳しかったですよ。走ったり、タックルしたり、基本的なトレーニングばかりしていました」

大学は京都産業大へ。

「本当は関東の大学へ行きたいという気持ちがあったんですが、高校の先生から京産を勧められて、ノーという選択肢はなかったんです。でも、今となっては、コベルコスティーラーズに入ることができましたし、京産に行って良かったと思います。高校の頃はトップリーグでプレーすることなんて考えたことがなかったですから」

コベルコスティーラーズでは1年目から公式戦に出場しています。1年目から試合に出られるとは思っていたのでしょうか?

「ラグビー界のエリート街道を歩いてきたような選手には負けたくないという気持ちはありました。実は九州国際大付高出身で、トップリーグプレーヤーになったのは僕だけなんです。だから、母校のためにも頑張ろうと思って。でも実際、自信はなかったですね。高校、大学では、ボールを持って走るようなプレーを得意としていましたが、その部分については僕よりもいい選手がいます。求められるものが変わって、そこで一生懸命やっていたら、今のようなプレースタイルになり、ここまで来たという感じです」

体を張り続けるプレースタイルはコベルコスティーラーズで確立されたと。

「そうですね。ボールキャリーはほかの選手に任せて、それ以外の仕事をしていたら、自然と派手なプレーはなくなっていきました」

日本代表もサンウルブズも興味がない!とにかくチームを優勝させたい!

谷口(到)選手や安井選手が、橋本選手が抜かれる場面を見たことがないと言っていましたよ。それにパスもキックも何気にうまいと。

「2人が勝手に言っているだけですね、抜かれていますよ(笑)。でも、パスはうまいかも。昔から練習では失敗するけれど、試合では成功するんですよ。キックは1シーズンに1度くらいしか蹴らないですが、いつもいい結果に終わりますね」

コツがあるんですか?

「小さい頃からラグビーをよく見ていたからですかね」

きっとラグビーの才能があったんですね

「才能はないですよ、本当に。それに身体能力が高くないですし。前川も、NTTコミュニケーションズの金(正奎)くんも、すごいなって思います。足が速かったり、体が強かったりして、身体能力が高い。僕はそういう選手をラグビー界のニュータイプと呼んでいるんです。到さんも安井もニュータイプですね。僕は古いタイプのラグビー選手なので、目の前のことをただ一生懸命やるだけです」

例えば、ベンチプレスはどれくらい上げるんですか?

「前川はマックスで200kg。重が180、190kgくらいです。僕はだいたい150kgですよ。それにフィットネスも中の下くらいですし」

とはいえ、橋本選手は、2012年にエディージャパンに召集されています。また、どの選手に聞いても、橋本選手は日本代表に選ばれてもおかしくないと。ご自身は日本代表やサンウルブズのメンバーに入ってプレーしたいという思いはないのでしょうか?

「『嘘やろ?』とよく言われるんですが、日本代表にもサンウルブズにもまったく興味がないんです。ワールドカップも出たいと思わなくて。それよりチームを勝たせたい。2012年に代表入りした時も、キャプテンに就任したばかりでしたし、断ろうとしたんですが、周りの方に説得されて。僕の目標は、とにかくコベルコスティーラーズを優勝させることなんです!」

キャプテンをされている間、神戸を優勝させたいとずっと言われていましたもんね。今シーズンこそ、優勝してほしいです。

「今シーズンこそと言って、もう長いですからね。自分が試合に出る出ないにかかわらず、チームを優勝させることができるよう、前川をサポートしつつ、1戦1戦、大事に戦っていきたいと思います!」

ありがとうございました!

loading