インタビューInterview

close-up KOBE -Long interview-

2019.04.04

チームディレクター福本正幸インタビュー 「チームのために、仲間のために選手が体を張って戦ってくれた」

ウェイン・スミス総監督、デーブ・ディロンヘッドコーチの新体制で臨んだ2018-2019シーズン。コベルコスティーラーズは、レッドカンファレンスで1位通過を決めると、進んだ日本選手権大会兼トップリーグ総合順位決定トーナメントでも順調に勝ち進み、2012-2013シーズン以来の決勝進出を決めた。決勝戦では連覇中のサントリーサンゴリアスを相手に、圧倒的な強さを見せ、55-5で、トップリーグ15季ぶり、日本選手権18季ぶりの頂点に立った。

福本正幸チームディレクターに今シーズンを振り返ってもらった。


体制を一新し、見られたさまざまな変化

−優勝おめでとうございます。今シーズン、長年ニュージーランド代表のコーチを務め、ラグビーワールドカップ2連覇に貢献した世界的名将であるウェイン・スミス氏が総監督を務めることになりました。改めてスミス氏にチーム再建を託した理由を教えてください。

「2017年5月、チームディレクターに就任した際、会社から日本一奪回に向けて、優秀な指導者を獲得することを命ぜられました。その時に出会ったのがウェイン・スミス氏です。彼は2000年頃に同じく神戸で活動する『ワールドファイティングブル』で一時期コーチをしていたこともあり、当時のライバルチームである神戸製鋼のことをよく知っていました。そして、2015年から提携関係にあるスーパーラグビーの『チーフス』でコーチングスタッフを務めていたこともあり、平尾(誠二)元GMとも交流を持っていました。そんなスミス氏が、平尾元GMが亡くなった後の神戸製鋼を気にかけてくれていることを聞きつけ、すぐにニュージーランドへと向かいました。そこで、彼にチームづくりにおける理念を伺い、私の考えと一致したこともあり、彼の手腕に委ねようと決心しました」

−スミス総監督のチームづくりの理念とは?

「『Better people make better All Blacks(より良い人間がより良いオールブラックスをつくっていく)』という言葉通りです。『私はプレーだけで選手を選ばない。人間性に優れた選手を育てていきたい』と、彼は明言しました。2年前のインタビュー(2017年8月発行の『REAL RED vol38』)で、私は今のコベルコスティーラーズに、『心技体』の『心』の部分が足りないのではないかと苦言を呈したと思います。ラグビーが上手ければそれでよい、という考えでは本当に優れた選手にはなれませんし、チャンピオンチームをつくれません。人としても、周囲から尊敬される、そして子供たちのお手本になれるような選手になってほしい。そういう選手を彼なら育ててくれるのではないかと感じたからです」

−今シーズン、チームに変化を感じ取られましたか?

「変わりましたね。シーズンが深まると、どうしても試合に出場するメンバーとそうでないメンバーがはっきりしてきます。これまでは試合のメンバーから外れた選手が練習へのモチベーションが上らず、チームに悪影響を及ぼすことがありましたが、今シーズンは、そういうことは一切ありませんでした。彼らは試合に出るメンバーのために、対戦相手の分析をしたり、相手チームの動きをコピーしてメンバーと対戦したりして、チームが勝つために、自分たちの役割をしっかり全うしてくれました。スミス総監督と(デーブ・)ディロンヘッドコーチがそのように選手を導いてくれたこともありますが、選手、スタッフ全員が『優勝』という大きな目標のために、それぞれの役割を担ってハードワークすることができました」

−また、スミス総監督の提案で「レガシー活動」を行いました。

「今シーズンは12人の選手が去り、新たに15人の選手がチームの一員になりました。他チームから移籍してきた選手もいれば、外国人選手もいます。さまざま経歴を持つ選手がいる中で、チームを一つの方向に向かせるために、彼はレガシー活動を行ったのです。会社やチームの歴史を学ぶことを通じて、『何のために、誰のためにラグビーをしているのか』『なぜ神戸製鋼でラグビーをするのか』『神戸製鋼がなぜラグビー部をつくったのか』ということを考えさせ、自分たちが会社を代表して戦っていることや、自分たちの戦いが神戸製鋼ラグビー部の長い歴史の一部として刻まれていくことを全員に教え込みました。そして、製鉄所の作業現場で働く人々を『スティールワーカー』と表現し、『神戸製鋼のスティールワーカーは厳しいことから逃げずにハードワークする。それはラグビーにも通じることである。我々も彼らのようにラグビーに対してハードワークして取り組もう』と提唱し、さまざまなアイデアを出してくれました」

−その1つが第3高炉の見学だったんですね。

「そうです。この件については、まだスミス総監督が来日する前の2月頃に質問されました。彼は阪神・淡路大震災発生から2ヶ月半で復旧を遂げた第3高炉が休止・解体されるという話をどこかで調べたのでしょう。『震災復興のシンボルだった第3高炉が解体されることに対して、君たちは何も感じないのか?』と聞かれたのですが、私自身、入社以来、ラグビーと仕事を分けて考えていたので、そのような発想がなく、スミス総監督の質問に虚を突かれて愕然としました。それと同時に、愛社精神をチームの求心力に取り入れる彼の手腕を目の当たりにして鳥肌が立ちました。その時に、解体される高炉から遺物を持ち帰りたいと依頼を受け、関係部署と調整して高炉で使用されていた耐火レンガをもらい受ける許可を得て、4月下旬に全員で高炉の解体現場へ向かい、耐火レンガをひとりひとつずつ拾ってクラブハウスへ持ち帰りました」

−会社とチームがひとつになっていった。

「それをもっとも強く感じたのは、決勝戦です。準決勝でトヨタ自動車に勝利した後、アダム・アシュリークーパーが、『スティールワーカーとして、従業員と一緒に戦いたいので、決勝戦で作業服を着てグラウンドに出たい』と提案してきました。決勝戦まで時間がなく、すぐに神戸製鉄所総務部に勤務しているOBの清水秀司に作業服の調達を依頼しました。2メートル前後ある選手の作業服を集めるのは至難の業だったそうですが、体の大きな従業員が自分の作業服を使ってほしいと申し出てくれて、なんとか集めることができたそうです。決勝戦では、長年応援してくださるファンの皆様の後押しを受けながら、選手たちは従業員の気持ちと一緒に戦えたので、あの大勝につながったのだと思います」

コベルコスティーラーズを勝ち続けるチームに

−決勝戦を見た感想は?

「選手が仲間のために、チームのために体を張ってハードワークしている姿を見て『ええチームになったな』と心から思いました。また、スペースにボールをつないで前進を繰り返してトライを奪う、見ている人がワクワクするようなラグビーをしてくれました。V7時代のラグビーに戻ったようで懐かしい感じもしましたね」

−今シーズンは現役選手とOBとの交流もあったそうですね。

「これまでそういう機会がほとんどなかったのですが、レガシー活動の一環として、スミス総監督やディロンヘッドコーチに萩本光威さんを紹介し、ラグビー部の歴史を語ってもらいました。その後、OB会に外国人コーチたちと前川(鐘平)、(アンドリュー・)エリス、(ダン・)カーターを招待し、彼らにOBたちとの交流の場を設けました。皆、OBの話を熱心に聞き入り、チームの歴史を肌で感じたようでした。OBとの交流も、自分たちが神戸製鋼でラグビーをする意味を明確にする重要な活動となりました」

−ダン・カーター選手は目覚ましい活躍を見せてくれました。

「彼はラグビー選手としてだけでなく、人間的にも素晴らしい人物です。常に『今、自分はチームのために何ができるのか』を考えて行動し、若い選手の育成にも一役買ってくれています。エリスもそういう選手です。彼らのおかげでチームのレベルが向上し、レギュラー争いが激しくなったことも優勝できた1つの要因だと思います」

−来シーズンは連覇を期待されています。今後についてどのようなビジョンをお持ちでしょうか。

「チーム強化については、スミス総監督体制となってまだ2年目であり、今シーズン学んだことの精度をさらに高めること、そして、彼の引き出しから、新しい教えがまだまだたくさんチームに落とし込まれると思いますので、その教えをしっかりとチームのものにできるようにサポートしていきます」

−では最後にファンの皆様方へメッセージをお願いします。

「今回の優勝は、選手、スタッフだけで成し遂げることはできませんでした。勝てない時も辛抱強く応援し続けていただいたファンの皆様の熱い思いが、日本一へと大きな後押しをしてくれました。どの会場でもファンの皆様がスタンドを赤く染めてくださり、選手はどこでもホームのような気持ちで戦えて心強かったと思います。心より感謝申し上げます。これからもファンの皆様に『神戸の選手が一番ハードワークしている、一番面白いラグビーをしている』と誇りに思っていただけるようなラグビーを目指します。引き続き、応援の程、よろしくお願いします」

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