Pick Up Player Specoal Interview
4年に1度のラグビーの祭典、ワールドカップ。9月7 日に開幕したフランス大会で6度目を数える本大会に、日本代表の一員としてコベルコスティーラーズから松原裕司選手と今村雄太選手が参加した。開幕直前に、同じくチームから日本代表に選ばれていた大畑大介選手が左アキレス腱を断裂するというショッキングなニュースも飛び込んできたが、「大畑選手のためにも」と予選プール戦のフィジー、ウェールズ、カナダ戦に先発出場し、身体を張った熱いプレーを見せてくれた両選手。ワールドカップで何を掴んできたのか?そして次なるターゲット、トップリーグの抱負とは?その熱き胸のうちを語ってもらった。
すべてを出し切った!

今から6年前。コベルコスティーラーズに入部当時、日本代表に選ばれたいとの思いから、学生時代から慣れ親しんだ「8番」と決別し、「2番」に挑戦した松原。類い稀なラグビーセンスと猛練習の成果で、その2年後、桜のジャージに袖を通した。もちろんその先にはワールドカップ出場の夢があった。
「ワールドカップはラグビーをしている人間にとって最高の大会。その舞台に立てたことは本当に名誉なことだと思います」。
9月7日に開幕したワールドカップフランス大会で、オーストラリア戦を除く、予選プール戦3試合に出場。ラインアウトに、スクラムに、フィールドプレーに、全身全霊を傾けた魂のプレーを見せてくれた。
「ワールドカップはひと言で現すと『戦争』でしたね」。初めて出場したリアルテストマッチをこう表現する。「本気度がまったく違います。僕らもまったく今までとは違うテンションで臨みましたから」。そんな国と国の威信を賭けた戦いの場で死力を尽くした松原。カナダ戦の翌朝、目覚めると肩が上がらなかったそうだ。
「いつ痛めたのか、まったく分からないんです。カナダ戦でなのか、それともそれまでの疲労が蓄積されて出てきたものなのか。カナダ戦にしろ、とにかく出場した3試合、すべてを出し切りましたから」。
痛めた肩に関しては、シーズンインには問題ないと話す。ワールドカップを通じて、いかに良いボールをバックスに供給するか、ジョン・カーワンヘッドコーチがこだわるフロントファイブの仕事量、この2点にこだわり戦い抜いてきたそうだ。

大介さんと一緒に戦ったワールドカップ

日本代表は予選プールで2勝することを目標に掲げ、列強に挑み、0勝3敗1分という結果に終わった。しかし世界ランク12位のフィジーを追いつめ、カナダ戦ではワールドカップでの連敗を「13」で止める劇的な引き分けと、世界にアピールすることができた。松原は自身が出場した3試合をこう振り返る。「どの試合も勝利するという気持ちで臨みました。その中で特にフィジー戦の終わった瞬間は悔しいとかそういう次元で表せるような気持ちではなかったですね…」と唇をかむ。
「あの試合で最後にペナルティをもらった時、時間的な関係でタッチに蹴ることができなかったんです。そこでスクラムからモールで攻めるという選択肢がありながら、その時にそれが頭に浮かばなかったんです。それで普通にサインプレーでボールを下げてしまって、結局、トライを奪うことができずに試合が終わってしまった。もしあそこでスクラムを選択していたら、試合の流れが変わっていたかも…」。
ロスタイム、ゴールラインから10メートル。ジャパンは懸命にボールを繋ぐが、フィジーの必死のディフェンスの前に、ボールが蹴り出されノーサイド。その瞬間、ピッチに崩れ落ちるジャパンの選手たち。その中に松原の姿もあった。
「本当に歴史が変わるかもしれなかったですからね…。あの時、モールという選択肢が出ていればと、そういう思いが強かったので、カナダ戦のロスタイム、最後のペナルティでは、迷わずスクラムを組みました。完全にフィジー戦のことが頭をよぎりましたね。そしてモールになって、そこでは獲り切れなかったのですが、(モールが)崩れた後の展開から平のトライに繋がりました」。もちろん勝てなかったことに不満は残るが、3戦を通じて、大きな収穫があったと話す。
「世界と戦うために自分に何が必要かを充分に理解して日本に帰ってくることができました。これをモノにして、もう1度、ワールドカップで世界にチャレンジしたいですね」。それは具体的に何なのかを問うと、茶目っ気たっぷりに笑顔を見せながら「それはヒミツです(笑)。まだまだこれからも代表でプレーしたいので、簡単に情報を教えることはできないですよ(笑)」。この取材の席で松原は大会直前にアキレス腱を断裂した大畑から試合の前後にメールが入っていたことを明かしてくれた。
「『頑張れよ』とか『期待してる』とか、本当にごく短い文章なんですけどね。その短い言葉にすごく気持ちがこもっているなって。ワールドカップは(大畑)大介さんと一緒に戦っているという感じでしたね」。

「らしさ」を出していく

3月から日本代表合宿で厳しいトレーングを積み、ワールドカップで世界と対峙してきた。体重が絞られ、精悍さを増した顔には自信とプライドが漲る。
「この半年で多くのことを経験し、いろいろな情報を得ることができました。チームがやっていることをしっかり把握して、その中で自分は何ができるのか、何をしなければいけないのか、しっかり見極めて、この経験や情報を生かして今の神戸のラグビースタイルにマッチさせていきたいですね」。
今年のトップリーグではまず”自分らしさ“を出したいとも続ける。
「どうやって“自分らしさ”を見せていくのか。それは今、模索中なんですけどね(笑)」。
超攻撃的ラグビー×進化した松原裕司。いったいどんな相乗効果を見せてくれるのか。トップリーグ、コベルコスティーラーズの見どころがひとつ増えた。
真っ白になった!

「今までに体験したことがないような雰囲気で、キックオフの後、一瞬、頭が真っ白になりました」。
ワールドカップ初先発となったフィジー戦を振り返り、こう話す。大学選手権決勝に1年時から4年連続出場、ワールドカップ前までに12キャップを獲得してきた今村も、大舞台の独特の雰囲気に圧倒されたと言う。「試合の時、いつもは冷静なんですが、あんな風に頭が真っ白になったのは初めての経験です。ワールドカップのスゴさを感じました」。
50m、5.9秒で駆け抜けるスピードと力強いステップで相手ディフェンスを突破。高校時代から高い身体能力とラグビーセンスでジャパンを担う逸材として将来を嘱望されてきた。そんな今村がワールドカップを意識し出したのは、早稲田大1年時。ラグビー部で2004年オーストラリア大会の日本代表vsスコットランド代表戦を観戦した時からだと話す。それから2年後。2006年エリサルド前ヘッドコーチ時代に日本代表入り。そしてこの春、課題であったディフェンスに取り組み、ジョン・カーワンヘッドコーチにもその実力を認められ、日本代表のレギュラーの座を獲得した。そしてワールドカップへ。フィジー戦では前半、自陣でボールを受け独走態勢に入ろうとした瞬間、相手の伸ばした足が太ももを強打するというシーンもあった。
「足はもうすっかり大丈夫です。あの場面は自分では抜けていた感覚だったんです。けどそこで外にパスを放れて繋げることができていたらもっと良い形になっていたんじゃないか。後からビデオを見て、そういう場面が結構あって、冷静な判断ができていなかったなって思いました。全体的にフィジー戦は余裕がなかった。チームとしてトライを獲り切れなかったことも悔いが残りますし、個人として判断の部分がまだまだ足りないと気づかされました」。

悔やまれるウェールズ戦

フィジー戦で足を痛めた今村。中7日間、別メニューで調整して臨んだ世界ランク8位のウェールズとの一戦とは、いったいどんなものだったのだろうか。
「ウェールズ戦ですか?悔しい。そのひと言に尽きます。自分が出場した3試合を通じて、一番印象に残っているシーンがタックルに入ってハンドオフされて抜かれた場面なんです…」。
前半19分、自陣ゴール前、相手ボールを奪った大野からパスが繋がり最後は遠藤がトライを決めるなど、格上のウェールズに対し、互角に戦っていた日本代表。そして今村が言う痛恨のシーンは前半24分、ウェールズが10番、13番、12番と展開し、タックルに入った今村をハンドオフで振り切り、そのままトライ。これを機にウェールズの猛攻が始まった。
「ボールを持った選手がタッチラインのすぐそばを走っていたので、タッチに押し出せばいいという考えで、中途半端にタックルにいってしまって…。そしてハンドオフされて抜かれてしまった。きちんと低くタックルに入っていたら、止めれていたかもしれないですし、あんな抜かれ方をされたことがなくて、今までで一番悔しいです」。
ウェールズ戦終了直後にインタビューをした時にも「自分のミスタックルで得点を奪われたことが悔しい」と、消え入りそうな声で話をしていたことを思い出す。
「あの時はかなり落ち込んでいました。僕はあまり自分の悪いプレーを引きずるタイプではないんですが、あれから2週間以上経ちましたが、あのプレーだけは忘れられないです」。
この試合では、前半19分の遠藤のトライに繋がるラストパスなど、見せ場もあったが、チームの勢いを止めてしまうようなプレーをしたことを悔やむ。
「カナダ戦でも自陣ゴール前で自分のノット・リリース(ザ・ボール)からトライを奪われてしまって、これも悔やまれます」。
一瞬のミスで試合の流れが変わってしまう怖さも知ったと話す。
「カナダ戦で良かったことはチームが負けなかったことだけです。やっぱり勝ちたかったです」。
大会前に「自分の持ち味であるボールを持った時の早さや強さを出したい」と抱負を語ってくれた今村。その強みを出すことができたのかを問うと「まったく見せることができなかった」とひと言。
「ワールドカップで世界と戦って、良い勉強をさせてもらいました。世界と互角に戦うには、まだまだ自分には足りないものがいっぱいあるなと感じましたし、それを身に付けて、また4年後、ワールドカップに出場したいです。そして、今度は満足の行くようなプレーをしたい。現時点では、それが大きな目標です」。

トップリーグで悔しさをぶつける!

いよいよ10月26日、トップリーグが開幕する。
「頭はもう完全にトップリーグモードです。また初めての経験ができるので楽しみですね」。
もちろん日本代表とはいえ試合に出場するためには、厳しい「コンテスト(競争)」を勝ち抜かなければならない。しかもポジションは層の厚いCTB。一回りも二回りも成長してきた今村とはいえウカウカしていられない。
「ワールドカップでの経験を生かし、プレーに反映してどんどんアピールしていきたいです」。
さらに「ワールドカップでは自分の出来に全然満足していません。だから、これから1日1日を大事にし、レベルアップしていって、また来年の春に日本代表に選ばれるよう、トップリーグでも頑張ります!!」。

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